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2004年7月
月山・鳥海山(森敦) dog.one
生きている江戸ことば(林えり子) 色の歴史手帖(吉岡幸雄)
EXCELショートカットキー事典
超私的まんが道2≪一冊入魂≫
HELP!!(藤原規代) .

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「だども、カイコは天の虫いうての。蛹を見ればおかしげなものだども、あれでやがて白い羽が生えるのは、繭の中で天の夢を見とるさけだと言う者もあるもんだけ」
「天の夢?」
月山・鳥海山

森敦

文春文庫 543円+税

もうだいぶ以前──20年以上前じゃないでしょうか──からいつかは読みたいと思っていた作品をようやく読んだんです。私にはずっと、月山というと森敦、森敦というと『月山』というふうに思い浮かんでいたものでした(私は月山という山を実際に見たことがありません)。そうして、いざこの作品を読みはじめ、あちらの方言に阻まれる感じをなんとかしのいでいきながら、「ああこれはこういう作品だったのか」と驚いたんですね。そこでこの20年のうちに読んでしまわなくてよかったと思いもしたんです。いま初めて読んで、ちょうどよかったと思ったわけです。

ながく庄内平野を転々としながらも、わたしはその裏ともいうべき肘折の渓谷にわけ入るまで、月山がなぜ月の山と呼ばれるかを知りませんでした。そのときは、折からの豪雪で、危うく行き倒れになるところを助けられ、からくも目ざす渓谷に辿りついたのですが、彼方に白く輝くまどかな山があり、この世ならぬ月の出を目のあたりにしたようで、かえってこれがあの月山だとは気さえつかずにいたのです。しかも、この渓谷がすでに月山であるのに、月山がなお彼方に月のように見えるのを不思議に思ったばかりではありません。これからも月山は、渓谷の彼方につねにまどかな姿を見せ、いつとはなくまどかに拡がる雪のスロープに導くと言うのをほとんど夢心地で聞いたのです。

「わたし」は寺のじさまのやっかいになります。
やがて秋になり、冬が訪れます。

しかも、その紅葉は次第に山の頂に及んで、あたりいちめん紅葉になってきました。なんの木の実が紅くなるのか、黄色くなるのか、またおなじ実でも紅くもなり、黄色くもなるのかわたしにはわかりませんでしたが、その紅も黄色も驚くほど鮮やかで、なにかこう、音響を感じさせるばかりではありません。僅かな日ざしの動きや違いに、その音響は微妙に変化して、酔い痴れる心地にさせるのです。しかし、紅葉はいつとなく潮のように退いて行き、散り遅れた数葉をまばらに残して、裸になった木々の間から、渓をつくる明るい斜面が遠く近く透けて見えるようになりました。散り敷いた落葉を踏んで行きながらその一枚を拾うと、蝕まれて繊細なレース編みのように葉脈だけになった葉にも、まだいくらかの紅や黄色の部分があって、心地よい残響にも似たものが感じられるのであります。
「すばらしい紅葉でしたね。紅葉がこんなものとは、夢にも思っていませんでしたよ」


秋を描いた次のページではもう、

その雨もビショビショとして冷たく、もう瞬時に山々を掃き渓や山襞に霧を這わせて、キラめきながら去って行くあの爽やかな驟雨とは違うのであります。たまたま上がっても、どんよりとした空にたえず不穏な雲が低く走ってすぐまた雨になるばかりか、激しく庫裏のトタン屋根を打つ音がすると思うとみぞれ、氷雨になって、かいま見る月山も白くなってきました。


そして雷が鳴り、

「近いですね」
思わずわたしがそう言うと、寺のじさまは汁椀を抱えたまま、紐で結んだ老眼鏡をガラス窓のほうに向け、
「近いの。おらほうだば、こげだ雷を雪おこしというなだて。こん夜あたり、ここらの山も白くなるんであんめえか」
果たして、雷は山々に木霊させながら遠ざかり、トタンを打つ氷雨の音もなくなって、ガラス窓の闇に白いものがスジを引きはじめました。
「いや、もう降って来ましたよ。バスもこれでダメかな」


バスが山を登って来られなくなるということは、「わたし」が帰れなくなること、ここで冬を越さなくてはならなくなるということでもあって、「わたし」は気にします。この「わたし」が何者か、どういう経歴の者なのか、ということはほとんど明かされません。そして、この作品はそういう謎解きの話ではありません。「わたし」はどうやら一種世捨て人のように放浪していたんですね。しかし、世間とのつながりがまったくないかというと、それは細々としたものながら、あるんです。でも、本人にはそう断言することもできないかもしれません。そうして、「わたし」は月山の山ふところの住人たちと交わっていく──奇妙な交わりかたです──ことにもなります。それはさておき、

「わたし」の暮らしている庫裏の二階はどんなところかというと、

……いまはただ中央と両側の腰高の窓にそった廊下や敷居、鴨居を残すだけで、天井もなく、棟木も梁もまる見えの百畳ほどの広間になってい、わたしはそのいちばん奥の、境内を見晴らす片隅に寝起きしていたのです。

階上は暗いなかにも粉雪で、畳がいちめん白く見え、歩けば足跡がつくほどです。

ここに「わたし」は古い祈祷簿を利用して、八畳ほどの和紙の蚊帳をつくります。そこで寝起きするわけです。

どうやら今夜も月夜のようです。わたしが独鈷ノ山で見たこれらの渓谷をつくる山々や、彼方に聳えて臥した牛のように横たわる月山も、おぼろげながら吹きの上に銀燻しに浮き立っているであろう。そんなことを思っていると、わたし自身が吹きとともに吹いて来て、吹いて行くような気もすれば、もはやひとつの天地ともいうべき広大な山ふところが、僅か八畳にも満たぬこの蚊帳の中にもあるような気もするのですが、眠りを誘う単調なまでの吹きのざわめきに、うつらうつらして来たようです。しかし、これもひとり繭の中にある者の、いわば冬眠の夢といったものかもしれません。


「お前さま、和紙の蚊帳つくっているというんでろ。どげなもんだかや」
「どうって、まァ繭の中にいるようなものかな」
「繭の中……」
女がそう呟くと、じさまはまたひとりごとのように、
「そういえば、どの家もカイコを飼うて、二階三階はカイコ棚にしとったんども、いまは桑の木もすっかりのうなってしもうての。変わったもんだて」
と、言うのを受けて頷いたのは、首振りのばさまであります。
「だども、カイコは天の虫いうての。蛹を見ればおかしげなものだども、あれでやがて白い羽が生えるのは、繭の中で天の夢を見とるさけだと言う者もあるもんだけ」
「天の夢?」



これは、月山という山を単にあたりまえの山として、ひとが山といって思い浮かべる山のイメージを借りるだけの山として、また、日本地図のどこかにある山を単に舞台として(すでに出来上がったものとして、道具として、前提として)描いた作品なのではなくて、この山をあらためて存在させるための作品なんだという気がしました。そこでの出来事を語るために月山が用意されたのではなくて、月山という山を描くために出来事が描かれたのだ、という感じです。というか、語られる出来事までひっくるめてこの作品のすべてが月山なのだという、そういう感じですね。
そう考えると、いい作品というものはみな、こうしたものだという気もします。作家にとってこの月山にあたるもののない作品というのは、どれもつまらないものじゃないでしょうか。出来事の部分部分がただその部分部分だけのためにあって、いちいち完結してしまう、それぞれに「ここはこういう意味、それはこういうこと」と都合のいい解釈を羅列したような作品ではなく、全体を読んでみないと部分の意味がわからないというほどの懐の深い作品、これがわからないのは作品のせいではなく、読者の非力のせい、とでもいうほどの作品を読みたいものだと思います。
こんなふうにいってしまうと、未読のひとからこの作品を遠ざけてしまうようでもありますが、そうじゃないだろうと思います。むしろ近づけると私は考えます。







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dog.one
ドッグ・ワン Vol.01


インターアート出版 300円(税込)

すべてペット用品!基本的にワンちゃん専用の通販誌が発売されました。いままでもペット用品を通販で購入できる雑誌がたくさん出版されていますが、一冊まるごとワンちゃん専用の通販誌はほとんどなかったと思います。通販誌ということで低価格なところも良いと思います。内容は、フードサプリ・グッズ・ヘルス・ファションに分かれていて、おすすめなのがフードサプリです。商品の特徴・年齢対応・保証分析値・主原料が載っていて安心して選ぶことができます。また、サプリメント商品も充実しています。サプリメント?と言う方にも基本講座がわかりやすく載っていますので一度試してみてはいかがでしょうか。その他かわいいウェアからリード・キャリーバッグ等欲しくなる商品がたくさん紹介されています。ワンちゃんの健康と快適な生活を考えてより良いものを選びたいという方におすすめです。






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生きている江戸ことば

林えり子

集英社新書 680円+税

 【標準語】に紛れ込んだ【方言】

以前本コーナーにて三省堂の【方言小事典】を取り上げましたが、あの本の文中でも【江戸弁】として幾つかの【江戸言葉】が紹介されておりましたが、今回は【江戸弁】オンリーの案内書でございます。

普段我々が口にしている言葉の数々の中に、脈々と受け継がれる【江戸ことば】、元々の成立は江戸時代の1741〜1764年頃。確立されたのは1804〜1864年と言いますから、比較的新しいことばと言えるでしょう。

例えば、文具店などで売られている安価な印鑑の事を【三文判】、飲食店から取る出前の食べ物を【店屋物】と表現しますが、これらは全て【江戸ことば】、従来の標準語には無い言葉であるのをご存知でしたでしょうか?

  水鉄砲をつるべ打つ暑い事

昭和40年代迄は、こんな光景が真夏の都内でも見掛けられたのですが…今となっては懐かしい過去の光景。
年齢によっては新鮮に、ノスタルジックに感じる【粋な】江戸ことばの世界…川柳を交えて齧っちゃみませんか?

  今回のオススメ度 ★★★★★(意外と知らずに使っている【隠れ方言】な江戸ことば、【美しい日本語】系の書籍を読破された方には是非とも一読して頂きたい。)






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色の歴史手帖

吉岡幸雄

PHPエル新書 1000円+税

  日本古来の色彩を楽しむ

今月2冊目の紹介は、【美しいことば】に続いて【美しい色彩】。古来より日本と言う国は、色の表現も様々な言葉で表し、西洋のそれを遥かに凌駕しています。

例えば、【赤色】一つとっても【朱】・【緋】・【臙脂(えんじ)】・【蘇芳(すおう)】・【茜】…本書で取り上げた【赤】だけで、【茜】を除いても12種類。先人たちの細やかな感性を窺い知る事が出来ます。

色鉛筆の定番色である【山吹色】・【黄土色】・【群青色】なども、元を正せば日本古来の伝統色…本書を紹介するにあたって、当HPにてそれぞれの色彩をご披露したかったのですが、パソコンに搭載されたグラフィックボードの能力が低すぎて断念(泣)

実際の色がどの様な物か確かめたい方は是非、本書を手に取ってお確かめ下さい。

  今回のオススメ度 ★★★★☆(この本で初めて知った事なのですが、現代の我々が用いる【青】と、昔の人が用いた【青】では、色調に格段の差があります。御自身の眼で確かめて欲しいのですが…伝統色の【青】が、東京湾の海の色に近いと感じたのは私だけでしょうか?)






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仕事力UP!
EXCELショートカットキー事典


祥伝社 933円+税

Excelユーザーの皆様に質問です

普段キーボードで打ち込み作業をしていて、マウスに持ち替えなければならない時って、面倒臭くありませんか?
それ程頻度は高くないけれど、私はそう思います。

元々Excelと言うアプリは、マイクロソフト社製のOS環境下において使用される事を前提にしているので、Windows同様マウス・デバイスが無くともキーボードで全ての操作が可能な様設計・プログラミングされているのをご存知だったでしょうか?

本書は祥伝社さんが発売する、【ショートカットキー事典】の第3弾目に当たり、職場では最も使用頻度の高いExcelを取り上げております。

ワークシートの選択・変更から、セルの挿入・削除といった、普段はマウス操作でアイコンから選択していたコマンドも、本書ではショートカットキーを紹介して簡略化を推奨。

慣れるまでには若干の違和感を感じるかも知れませんが、慣れてしまえば歌い文句にもある【仕事が5倍速くなる!】も、あながち夢では無いかも知れません。

  今回のオススメ度 ★★★★★(職場でExcelを頻繁に使用する方、Excelでの作業効率を向上させたい方にはお勧めの1冊。パソコンの傍らには是非とも常備を。)






≪一冊入魂≫

第31回 『HELP!!』




夢は大きく…
 
 小さい頃、大きくなったらなりたかったものって何でした?私もいろいろありました。おもちゃ屋さんでしょ、獣医でしょ、先生でしょ…本当に数え切れないくらいの憧れを持っていましたね。そのうちの何個かは実際に叶っているんですが、なかなか実現していることって少なかったりしますよね。

 今回の主人公もそんな夢を持ったまま東京に出てきた女の子。その先で出会った男の人にキツ〜いひと言をいわれてしまいます。けれど夢をあきらめない!そんな強い信念を持った女の子のお話です。詳しくは本文で…



HELP!!

藤原規代

白泉社 全1巻 390円+税
 まずは簡単な作品紹介から。

 田舎町から夢をかかえて出てきた少女、香坂シン。彼女は父親のような立派な医者になりたくて東京の医大に通うべくひとり暮らしをはじめるのだった。ただそんな彼女は泣き虫で小心者。ちょっとのことで夢を挫けそうにはなるものの、持ち前の人一倍の情熱で頑張っている。

 そんな彼女が街角で急に倒れた人を目撃する。医大生である彼女に周囲の期待は高まるものの、入学してまだ1週間足らずの彼女の手におえるものではなかった。そんなとき、ひとりの男の人が駆け寄り、ささっと治療してしまう。そしてシンにこういうのだった…

『あんた、医者になんの?ふーん、じゃあさ 今すぐやめた方がいいぞ。むいてない』


 その男の人は阿部克哉。実はシンの通う医大の英語の先生でした。彼の授業はとても厳しいもので、噂では昨年留年した生徒のうち3割が彼の授業を受けた生徒だったらしいのです。

 そんな先生に会うなりむいてないと落第点をつけられてしまったシン。授業でもひとり集中砲火を浴びる羽目に。落ち込む彼女に田舎の両親から電話が掛かってきます。声を聞いて元気を取り戻し、大声で予習復習をはじめた彼女でしたが、待っていたのは隣の住人からの無言で壁を殴る音でした(笑)

 ある日、大学の近所の道路で知りあった小学生と再び出くわす。ドンくさいため道を渡れないシンに見本を見せてくれる。とそのとき、車の陰から飛び出してきた1台のバイク。少年もバイクの運転手も酷いケガを負ってしまう。その場にいたシンは応急処置を試みようとするが、周囲の人はヘタに触らない方が良いと口々にいっている。それを聞いたシンはこういった。

『その間にこの子死んじゃったらどうするんじゃあ』

 それを聞いた周囲の人もようやくシンに協力すべく動きだす。そしてもうひとり、それを聞いていた人がいた。それは阿部先生。彼は傷口を手で止血しようとしながらも困り果てていた彼女の手にそっと手を添え、正確な指示をシンに出し、そしてこういったのだった。

『香坂!!よくがんばった』


 駆けつけた救急隊員のおかげで事なきを得た2人。応急処置のおかげであったといわれひと安心したシンですが、張り詰めていた気が抜けてしまい、腰が抜けてしまいます。

 彼女を背負って歩いていく阿部先生。その大きな背に揺られているうちに寝入ってしまいます。気がつくと自分の住んでいるマンションまで到着していました。だけれども先生に住所を伝えた覚えは全くありません。学校で調べることは出来ましょうが、そんな時間もなかったはず?では一体?と思う彼女に先生はこう告げるのでした…

『お前は冷静さと判断力に加えて注意力 洞察力も足りないようだな。それからがんばるのは結構だが、大声で勉強するのは勘弁してくれよ
超私的お気に入りエピソード

いいお医者さんになりたいです

P.136〜173
 いつものように落ち込んでいたシンだったが、阿部先生の友人から先生が大事に思っていた人のことを聞かされ、自分が先生の嫌うタイプであるといわれた。更に落ち込む彼女をその友人はとある場所に連れて行く。

 そこは以前交通事故でケガをした小学生の病室。少年とその母親に感謝され再び夢を実現させようと固く誓うシン。そして先生の元に行き医者になることを諦めないこと、そして先生にも再び医者に戻ってほしいと告げるのだった…

 実は安部先生は昔はかなり優秀な医者でした。ただ彼の患者でもあり、大事に思っていた人の死をきっかけに医者を辞めてしまっていたのでした。先生を怒らせてしまったと思っているシンの元に田舎の父親から電話が掛かってきます。それは先生を田舎まで連れてこいということでした。この辺の理由に関しては実際に読んでもらえればと思いますので割愛します(結構笑えます)

 …っという間にシンの田舎へ赴く5人?2人きりでは誘いきれないシンは大学の友人を巻き込んで何とか先生を連れ来たのでした。

 先生を酒に誘うシンの父親。そこでいわれたのは自分は銀行員であること。つまりシンの父親は別の人で、彼の弟だった。驚く先生の元にやってきたシン。父親は今日行われる水祭りに一緒に行っておいでと彼女にいう。

 水祭りに出かけるシンと先生。水祭りとはお盆に行われる灯籠流しのこと。彼女は灯籠を一つ手にとり先生に手渡そうとする。だが余計なことと言い放つ先生。彼女は彼の言葉を遮りこう呟くのだった。

『わかるもん!!あたしも小学校の時お父さんもお母さんも死んじゃったから…だからわかるもん。二人ともあたしが苦しんでたらきっと悲しがるもん。だからあたしもこの日は絶対笑ってこれを流すんです。そしたらきっとお父さんもお母さんも安心してまた帰れるでしょう。忘れなくていいと思うんです。ちゃんとその人のことを思いながら前に進むことだってできると思うんです。』

 と、そのとき、足を滑らせ川に転落するシン。川に飛び込み彼女を救出する先生。もう大事な人は失いたくないと呟きながら…


 実は先生が大事に思っていた女性は病室の窓から飛び降りて死んでしまっていたのでした。彼も周りの人も最初は事故だと思っていました。何故なら彼女は何ひとつ弱音も吐かずに治療に専念していたからです。だが彼女の残した日記と手紙を見つけたとき、それが自殺だったことに気付いたのです。そして自分が就いている医者という仕事の意味がわからなくなり、辞めてしまったのでした。それを聞いたシンはこういうのでした。

 『…先生って不器用じゃのう。だって!先生 未だに病院関係の仕事してるじゃないですか。本当に嫌だったら…忘れたかったら全然関係のない仕事しますよね!?なのにこんなきりはなせない仕事して…しかもいい医者育てるなんて好きじゃなきゃできないですよね。あたし色々迷ったりもしたけど、やっぱりいいお医者さんになりたいです。お父さんみたいな………先生みたいないいお医者さんになりたいです。』

 それを聞いた先生の口元にはうっすらと笑みが浮かびます。立ち去ろうとする先生を追いかけようとしたシンですが、またここでも腰が抜けてしまいました。そしてそのシンをひょいっと抱えあげ家へと帰っていったのでした。

 翌朝先生の姿は何処にもありませんでした。急用ができたらしく帰ってしまったとのこと。シンが再び家に帰ったとき、隣には先生のいる気配すらありません。1週間経ってもそのままです。一体先生はどこに行ってしまったのでしょうか?それはみなさんでご確認を…

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