home

2003年4月
そば屋 翁(高橋邦弘) プレイ−獲物−(マイクル・クライトン)
フッチボールの国 ジャポネースの夢(村田寛之) うちの犬コ用グッズ
魔界転生山田風太郎) 一夢庵風流記(隆慶一郎)
闇の12星座占い小野十傳
超私的まんが道2≪一冊入魂≫
キス(橋本ライカ) .

僕は自分のそばにそれなりの自信はありました。僕自身が食べておいしいと思うそばを、多少は他の人もおいしいと思ってくれるに違いない。
そば屋 翁
僕は生涯そば打ちでいたい。

高橋邦弘

文春文庫 543円+税
おそらくこの本は聞き書きの形でつくられています(「本文構成」に西脇さんという名前があります)。そば屋「翁」の主人高橋邦弘さんの話を西脇さんが書きつづる──このやりかたがとてもうまくいっていると思います。高橋さんの声がよくきこえてくるように書かれています。読んでいただければすぐわかるでしょうが、とても腰の低い、丁寧な語り口です。書き手の西脇さんはとても大変な仕事をやりとげられたのだと思います。そばのつくりかたにしても、単純につくりかたを理解するのでなく、高橋さんのつくりかたを理解しなくてはならないんです。高橋さんがどうしてそういうつくりかたをするようになったか、それが一般的なものとはどうちがうのか、高橋さんのめざしているものがどういうそばなのか、それらを理解しなくてはなりません。そうして、理解するだけでは書けないんですよね。まだまだたくさんの要素がある。西脇さん、とてもよいです。



「翁」というそば屋、そうして、主人の高橋邦弘さんというのは、ずいぶん有名なひとらしいんですが、私は知りませんでした。彼は昭和19年の末に生まれ、商業高校を出て空調の会社に勤めます。4年足らずでそこを辞め、しばらくは友人のつてで仕事をしていました。昭和47年、新聞記事で「一茶庵」の片倉さんがそば教室を開いているのを知り、受講します。

そばを打つのは楽しかった。家でもよく打つようになりました。しかし、だからと言ってすぐそば屋になろうと思ったわけではない。ただ、なれればいいなとなんとなく考え始めていたのだろうけれど、親兄弟にもそんなことは話さなかったです。この時二十代も後半になっていましたから、このくらいの歳からそばの修業を始めていいのかという迷いがあったのも確かです。

昭和48年、片倉さんの「一茶庵」宇都宮店で働きはじめます。28歳でした。
昭和50年、目白で自分の店「翁」開店。
昭和60年、目白の店を閉め、山梨で「翁」開店。


まず目白の「翁」で出していたのは、

手打ちそばと手打ちのうどん、多少のつまみと酒があるそば屋です。しかし、これは、結構画期的なことだったんです。世間的に見れば。
特別立地もよくなく、名前が通っているのでもない小さいそば屋で、いわゆるパパママ店(業界では、個人経営のこうした店をいいます)で、それが、ご飯ものをいっさい置かず、出前もなし。


高橋さんの考えでは、

僕は自分のそばにそれなりの自信はありました。僕自身が食べておいしいと思うそばを、多少は他の人もおいしいと思ってくれるに違いない。これが支えだったかもしれません。

この目白の「翁」はすこしずつ知られるようになっていきました。わざわざ高橋さんのそばを食べに来てくれるひとが増えていきました。

けれども、先ほど掲げたように、この店は昭和60年に閉店します。高橋さんは山梨に移り、あらためて「翁」を開店するんです。
目白時代から彼は材料にこだわって、長野でそばを栽培してみたり、いろいろな産地をまわってみたり、いくつもの製粉所をあたったりと、試行錯誤をつづけていたんですが、たどりついた結論は、もちろんそば自体も大事なのですが、決め手になるのが「製粉」だということなのでした。

自分で畑を作って、そばを栽培してみたことによって、結局は自分でそばの実の皮をむくところからやらなければだめだということに、ようやく気がついたんです。それまでは製粉すると言ってもまだはっきりした形を抱いていなかった。それが、ここへきて、実際に皮をむいたり石臼で碾いたりしてみて、やっと形として描けてきたのです。ちゃんとした製粉の施設を作って自分で全部やりたい、と。

自家製粉をしたい。製粉のことを試行錯誤していくうちに、そのためには充分なスペースが必要だということがわかった。玄そばの保管場所も確保しなければならない。とにかく自家製粉したくて、したくて。そのための場所が欲しかったんです。

というわけで山梨へ移ることにしたんです。

目白の店を閉めるにあたって、

僕だって東京の常連さんたちには申し訳ないとは思いました。思うけれども、しかしお客さんの都合で僕はそば屋をやっているわけではない。僕は僕が思うとおりのそばをつくりたい。その気持ちの方が強かったですね。

山梨での店づくりは

建物に関しては、知り合いの設計家にお願いして、シンプルで風景に溶け込むような、そば屋らしからぬ店にしてもらいました。

しかし、それもすんなりとうまくいったのではなく、

当初、地元と付き合わなければと考え、長坂の工務店と話を進めたのですが、どうしてもこちらの意向をとりあってくれない。そばだけのこぢんまりした店をと言っているのに、宴会もできる、バスも入れるドライブインみたいな建物を作ろうとしてくるんです。そのうえ建物の図面も決まらないうちに、土地の木を全部切り倒して造成しようとしてきた。さすがに僕も怒って、中止してしまいました。とにかく乱暴なんです。これには参りました。

私の想像では、この穏やかな高橋さんが自分の信念をつらぬくためには、上のような無理解とずいぶん戦わなくてはならなかったはずだと思います。この本の全体にしみわたっている謙虚なのびやかなトーンの下には実にわずらわしいたくさんの戦いがあるにちがいありません。

そうして、山梨の「翁」の品書きは目白よりもさらに少なくなって、

……もりそばだけです。二種類あって、白めの標準的なもりそばの「ざる」、黒めで太い「田舎」があります。田舎は作れる量に限りがあるので、早めになくなることもあります。
あとは飲み物です。ビール、日本酒。
これが翁でお出ししているものです。


営業時間は4時間(午前11時から午後3時)。……ですが、

朝四時から仕込みを始めて、製粉と手打ちと準備、営業時間は僕が釜をやって閉店後は店の掃除と翌日のための製粉作業。それでも一日十二時間は最低かかります。

いかがでしょう。とにかく実際に手にとってお読みください。


さて、私がこの本で惹かれたのは高橋さんのこういう考えかたでした。

僕が食べておいしいと思うそばを出せば、ある程度お客さんはついてくれるのではないかと。

僕は自分のそばにそれなりの自信はありました。僕自身が食べておいしいと思うそばを、多少は他の人もおいしいと思ってくれるに違いない。

そうして、

これはいつも言ってることですが、百人が食べて、百人がおいしいということはあり得ないんです。食べた人間がすべて翁が一番、他のそばは食べられないなんてことになったら、むしろ疲れちゃいます。そのうちの三十人が気に入って、残ってくれれば、充分じゃないか。

あるいは、

商売をしていると、よく「お客さまのためにやっている」というようなことを言います。あるいは、聞きます。お客さまに育てられて自分の味が研鑚されるというようなことも。けれども、僕はそう考えたことはないんです。誰のためでもない、僕は自分のためにそば屋という商売をしている。まず、自分が大事なんです。もちろん、おいしいそばをお客さんに出そう、あるいは、今日のそばを喜んでもらえるかな、などとは考えます。おいしいものを提供して喜んでもらいたい、というのは食べもの屋の主人としては当然の願いです。しかしそれは結果であって、僕は自分の仕事、自分のそばをやりたいようにやる。なんだか傲慢に聞こえるかもしれませんが。手打ちが人気だから、手打ちをするのではない。自分が食べておいしい、そばは手打ちのほうが適している、と考えるから手打ちをしている。そういうことです。

すばらしい。














Prey プレイ−獲物−

マイクル・クライトン 酒井昭伸

早川書房 上・下巻 各1500円+税
本屋さんで働いていると、ときどき出版社さんから、本をいただくことがあります。今回私が読んだのも、4月10日に発売される予定のSF小説のプルーフ版と申しますか、プレ・リリース版と申しますか、要するに「読んで感想きかせてね」という形でいただいたものです。

マイクル・クライトンといえば、最も有名な作品に「ジュラシック・パーク」があります。科学を駆使して、現代に恐竜のテーマパークを実現する。しかし、慢心する人間は、生命の(あるいは、種としての)力強さと、慎重さを欠いた科学力の危険性に気づくのに遅れをとり、手痛いしっぺ返しを食らう…、という内容でした。映画にもなりましたし、とても面白かったので観た方も多いでしょう。今回は恐竜というスケールの大きさから比べると、はるかにはるかに微小な存在ですが、やはり脅威の相手が敵役になっています。

その大きさは10億分の1メートル、いわゆるナノスケールと呼ばれるサイズです。クライトンが今回のテーマに選んだのは、この「ナノテクノロジー」でした。ナノテクノロジーって、たしか「ご冗談でしょうファインマンさん」(岩波書店)のファインマン博士が、「可能な限り小さな工作機械(A)をつくって、その工作機械(A)がさらに小さな工作機械(B)をつくって、その工作機械(B)がさらに……、そうするとほ〜ら最後にちっちゃな機械ができますよ。」って考えていたことが発端だそうです。そうは言ってもそれこそ「ご冗談でしょう」、なんて感じてしまうんですけど、日本はこの分野でも世界をホンのちょっとリードしているとか。なんせアメリカ合衆国クリントン前大統領はナノテクノロジーのための特別予算を組んだくらいですから、今世紀後半からの基幹産業にもなりうる可能性を持っているジャンルのようです。

さて小説の主人公ジャックは、いきなり情けなくて現在求職中のコンピュータ・プログラマー。平たく言うと失業中って状態です。対して彼の奥さん ジュリアはバリバリのキャリアウーマン、職業はこれもたぶんエンジニアといってよいのかな? ナノテク関連企業に勤めるやり手の女性です。彼女が留守の間、ジャックは食事・洗濯・育児をやりくりしています。彼はある頃から、妻の様子に著しい変化を感じ始めます。帰宅時間は遅くなり、その連絡もよこさなくなる。服装も派手になり、ヒステリー気味。家族の前では常に“躁”状態で、まるでドラッグでもしているのか、それとも浮気をしているのだろうか? ジャックはとても悩みます。

ある日、ジャックが以前勤めていた会社(=ジャックを首にした会社)から「ある企業に対する出向コンサルタントとして再雇用したい」との打診を受けます。どうするか決めかねていたジャックでしたが、その出向先が妻ジュリアの勤務先であり、その妻が奇妙な交通事故を起こしたことをきっかけに、コンサルタントの仕事を請け負うことにしました。──まぁ、ここまでの展開がちょっと長いんですけどね。なんせこれだけで160ページ。

砂漠のど真ん中にある、出向先の会社の生産プラントは(さぁ、やっと登場)ナノテクの研究開発の最前線でしたが、到着したジャックを待っていたのはそのナノマシン(=スワォーム)が暴走してしまい、それらがプラントの外に放出されてしまった、という事実。屋外では内蔵電池もすぐに切れ、またその大きさ・軽さから風に払われ、すぐに霧散してしまうはずが、屋外排出後数日経っても活動しつづけ、群体として存在していること。時間がたつごとにその数が増殖(自己複製能力)していること。そしてそのスワォームの行動プログラムは、かつてジャックが開発したPREDPREYシステムであること。それは自然界の動物の捕食者と被捕食者をプログラムに取り入れたものだった。

スワォームは単体では何の力も持たないが、何万・何億個もの集まりとなった群体として行動していた。また学習能力を持つことで、短時間で驚異的な進化をその行動面で示しはじめ、ついには、動物や人間を襲い始める……。

SF小説の楽しみは、「現在知りうる最先端の科学や技術をべースに、(あくまでも小説・エンターテイメントのためちょっとだけ歪めつつも)出来るだけ論理的に破綻の無いようにストーリーを構築して、未来の可能性の一端を垣間見せてくれるところにある」と私は思っているのですが、さすがクライトン。発想がとてもユニークです。(日本語でユニークと言うと、どうもよくない印象になってしまうのはなぜだろう?) スワォームの生産方法。運用当初のスワォームの使用方法。そして、そのスワォームの行動をコントロールするプログラムが、野生化してしまった彼らにどのように作用していくのか。体験した学習とそれを基づく行動の変化。etc…。

もちろん、いくら私が素人だからって、「それは20年経っても無理でしょう」ってのもありますけど。そこはSF小説のお約束。「まぁ、それはそれで置いといて…」という具合に流してください。ちょっと伏線がはっきりしすぎる感はありますが、これはおそらく、初めから映画化を前提に書かれたのかな、と感じてしまうところです。伏線がはっきりしすぎるように感じてしまう=ある程度これは後で使われるな、と読めてしまうのはその為かもしれません。ラストはいかにもハリウッド的ですが、なかなか面白かったです。














フッチボールの国
ジャポネースの夢


村田寛之

新風舎 1000円+税
中学生の頃、1年足らずだがブラジルに住んでいて、よく読んでいたサッカー雑誌にジーコやカレッカ、ベベット、ロマーリオなどと一緒に日本人プレーヤーの記事が載っていた時は、なんだか嬉しくて応援していたことを今でも覚えている。その頃からもう15年以上たつが、いったいプロのサッカー選手になるために海外を目指して行った少年はどれくらいいたのだろうか? Jリーガーでさえ海外のクラブに移籍して成功をした例もわずかなのに。
これは、そんな夢を追いかけ、16歳で単身ブラジルに渡ったタツヤ≠フ話です。自分の力だけを信じて夢を追いかけたが、20歳の春に訪れたその結末は……。

※ 私が中学生の頃にキンゼデジャウーのプレーヤーとして活躍していた日本人は今年もヴィッセル神戸でKAZU≠ニして夢をつかみ、少年に夢を与えるプレーヤーとして活躍を続けています。










獣医さんが安心に太鼓判!
うちの犬コ用グッズ


学研 1100円+税
これまでたくさんのワンコ用グッズの買える雑誌を紹介してきましたが、ついに獣医さんの太鼓判つきのものが発売されました。しかもすべて通販で購入可。ベッドやリードなどの生活用品はもちろん、自宅でのお手入れに便利な商品の紹介も載っています。おしゃれだけでなく、機能的で獣医さんのお墨付きですからとても安心です。例えば、これからの暑さ対策に8ページの「いつでもひんやりクールボード」。アルミ製なので丈夫で薄く、持ち手用の穴が開いているので持ち運びに便利です。17ぺージの「ブーツ」と「足裏バーム」は日差しで熱くなったアスファルト面を歩くことで肉球に火傷をしたり、傷ついてしまうのを防止してくれる優れものです。日中は暑いので夕方や夜のお散歩に出掛ける時にとっても便利な反射テープつきのリードとベストもあります。またワンコは人間より早く年をとってしまいます。年をとると人間と同じように介護が必要になります。長い間連れ添ってきたワンコに、より長くそして快適に老後を過ごしてもらうためのグッズも紹介しています。いざというときの応急グッズから薬を上手に飲ませられる便利グッズなど、あったらいいのにと一度は思った方も納得の品々ばかり載っています。とにかく絶対おすすめです。














魔界転生

山田風太郎

講談社文庫 上・下巻 各752円+税
            魔界に転生仕る…

…先日の深夜、某TVで角川映【魔界転生】を放映しておりました。

嘗て【天草四郎】役を沢田研二が、対する【柳生十兵衛】を千葉真一が演じた古い作品でありましたが、改めて鑑賞すると、話のあちこちがかなり省略されている事に気が付きました。

今回、窪塚洋介が四郎役でリメイクされる訳なのですが、何処まで原作に忠実な話になるやら…。

本書を始め、角川文庫版からも出版されている【魔界転生】でありますが、実は【山田風太郎忍法帖】と呼ばれるシリーズ物の6巻7巻目に相当する作品で、山田ワールドの全貌を知りたい方は、まず1巻から読み始めるのが妥当かも知れません。

転生成った、嘗ての剣豪が、触媒となった女性の胎内より生まれるシーンなどは結構グロかったりするのですが、この辺りの描写は映画ではどうするのか、見物です。

公開まではまだ少しの時間がありますから、本書を読破&旧【魔界転生】観賞後に、劇場へ足を運んでみたら如何でしょうか?

  今回のオススメ度 ★★★★☆(山田風太郎の代表作、遂に銀幕に復活!だけど、今回の十兵衛が…佐藤浩一じゃぁねぇ…)














一夢庵風流記

隆慶一郎

新潮文庫 667円+税
  七年の病もなければ三年の蓬も用ひず。

以前、【週刊少年ジャンプ】や、【バンチワールド・コミックス】をご覧になった方はご存知かも知れませんが、本書は【北斗の拳】を描かれた原哲夫さん作画の【花の慶次】の原作本であります!

前田慶次郎と言う人物、元は加賀の武将・前田利家の甥にあたる人物で、NHKの【利家とまつ】では及川光博がその役を演じておられましたが、漫画→小説と段階を踏んでしまった私には、弱そうな前田慶次の印象が拭えませんでした。

以前、米沢の上杉家資料館を見学した際、前田慶次郎とその莫逆の友・直江兼継の甲冑を見た事がありますが、両方とも160センチ前後の人間が着用する位の作りでありましたから、案外【及川・慶次】の設定の方が史実に近かったのかも知れませんね?

戦国きってのかぶき者、前田慶次の荒唐無稽な活躍は、ドラマ・漫画、どちらから入った方にも楽しめる事でしょう。

  今回のオススメ度 ★★★★☆(本書を読み終えたなら、是非とも慶次終焉の地・米沢にも足を運んでみて下さい。かぶき者と呼ばれた快男子の愛した、素朴な風景と雰囲気が、彼の風流人としての意外な一面を垣間見せてくれます。)





闇の12星座占い

小野十傳

講談社 848円+税
         真実の幸せをつかむには、
 自分の真実を知らなくてはならない…

普通12星座占いといったら、黄道12星座を基に表し、大抵は良い事を前面に押し出して、欠点などは遠まわしか、ソフトに触れている程度ですが…本書は違います。

まず悪しき所ありどころか、悪しき面を徹底的に分析し、その結果、己がどう言う面を正せばよりよい人間関係を構築できるかを教えてくれる占い本であります。

当然、使われている星座も、黄道12星座なんてメジャーな物である訳も無く、髑髏座・詐欺師座・悪魔座・幽霊座・蝙蝠座など、禍禍しい名称ばかり。

たまには良い面ばかりを追うのでは無く、普段目を背けがちに成ってしまう、【己の暗黒面】を見つめ直してみるのも良い事かも知れません…。

  今回のオススメ度 ★★★★☆(占いではタブーとされている、対象者の悪しき面を徹底的に分析する為の占い本。ちなみに私は【盗賊座】でした…あなたは何座?)




≪一冊入魂≫

第16回 『キス』

春ですねー!

桜ももう満開になりそうですね。皆さんの周りでも新入学生や新社会人たちが真新しい服を着て闊歩していることでしょう。
今回とりあげる橋本ライカさんはこのコミックが初単行本です。
だからといって新人さんかというとそういう訳ではありませんが(笑)。
彼女のデビュー作からの作品7篇が載っています。
とてもポップでキュート、それでいてピュアな作品ばかりです。
特に主人公たちと同世代の女の子に読んでもらいたい1冊!
少しだけですがそのさわりを紹介したいと思います。


キス

橋本ライカ

河出書房新社 全1巻 1000円+税

まずは簡単な作品紹介から。

何処にでもいるふつうの女の子たち。

彼女たちはいろいろなかたちの恋を楽しんでいます。だけどいつもうまく行くかっていうとそうじゃないんです。時には悲しいことも。思いきり悩み、思いきり恋をして、思いきり頑張ってみる!だから今こころの中に雨が降っていてもいつか青い空がのぞくんだよね!
そんな女の子たちの可愛くて、優しくて、ちょっぴり切ない7つの物語・・


 主人公たちは本当にごくふつうの女の子たちばかりなんですよね。読んでいると『いるいる、こういう娘』とか思っちゃったりします。しかも舞台や物語の設定もごく日常を描いているのでその感覚が増していきます。

 収録されている物語のほとんどで主人公の女の子たちのこころの中は曇り空や雨模様です。けれど思い悩んだり、アグレッシブに動いてみたりしている姿を見ているうちに次第に青空が見えてくるんですよね、不思議なことに。ですけれど、ハッピーエンドばかりじゃないんですよね。そこがこの短編集の面白いところだと思います。

 私は次のお気に入りのエピソードで紹介する話を読んでいる時に、何となく『頑張れー!』と応援したくなりました。男の私がこう思うんですから女性の方が読むと更にシンクロすることでしょうね。

超私的お気に入りエピソード

『キス』

P.5〜24

これがライカさんのデビュー作です。デビューからこれだけ描けるんですからすごいですよね。

 何処にでもいる16歳の女子高生鈴木。彼氏がいたら幸せだとは思うものの無理に出会いを作る気にはなれない。だから16年間そういう出会いもなかったわけ。クラスの周りの女の子はどんどん彼氏ができてしまい、そのたびに自慢されてちょっとゲンナリ気味。

 そんな鈴木にも西岡という男友達がいる。本当に友達でしかないような子。いつものように西岡から貸したCDを返してくれというような取るに足らない声をかけられる。周りでは依然としてはしゃぎ続ける女友達を見て更に気持ちは沈んでいく・・・

 ちょっと寒いけど気持ちよく晴れたある日、借りたCDを返そうとする鈴木。だけど西岡の姿が見えない。周りに聞いてみると屋上にいるらしい。

 屋上には寝転んでタバコをくわえている西岡の姿が。鈴木がいつものように声をかけるもののちょっと雰囲気の違う西岡。ちょっと焦りながらも鈴木は尋ねる。

『・・・た・・・たばこっっいつから吸ってるのかなーって!』

『ああ、姉ちゃんの影響だね。中2ぐらいから』

『へ・・・へぇータバコってぇどんな味するのかなーあぁあたし吸ったことないから・・・あたしも吸ってみよっかなーなんて』

 答える西岡。『・・・知りたい?』

『えっ』

『味。タバコ吸わないでさ・・・』


 この後の2人はどうなってしまうのでしょうか?それは皆さんで確認してくださいませ。
ただ鈴木のこころの中には青空がのぞいていたのは間違いありません。

home