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2003年2月
バラバ(ラーゲルクヴィスト) THE S.O.U.P.(川端裕人)
オールド・ルーキー(J.モリス J.エンゲル) 運命の一球(近藤唯之)
ペットとおでかけ日帰り編 わが最良の友 動物たち(遠藤周作)
おいしいコーヒーをいれるために(中川ちえ) 機動戦士ガンダム 兵器 モビルスーツ(円道祥之)
超私的まんが道2≪一冊入魂≫
机上の九龍(青木朋) .

どうして苦しみを欲することができるのか? 必要もないのに、またそれを強制もされないのに。これは不可解なことで、そのことを考えただけで、むなくそが悪くなりそうだ。彼はそれを考えると、あのやせ衰えた体、ほとんど体を垂れ支えることもできない腕、それにすこしばかりの飲み水がほしいということも口に出せないほどに乾ききった口をしたあの体が目の前に浮かぶのであった。いやだ、彼はこんなふうにして苦悩を求めた者、自ら十字架についた者が好きになれなかった。バラバはどうしても彼が気に入らなかった!
バラバ

ラーゲルクヴィスト 尾崎 義 訳

岩波文庫 500円+税


キリストが十字架に架けられたとき、処刑の定員は3名。処刑される候補は4名いました。ユダヤではちょうどある祭りにあたっていまして、4名のうち1名は無罪放免とされることになっていました。そうしてキリストが処刑され、代わりに放免された男がいたわけです。それがバラバでした。彼がその後どう生きたか?

キリストを含めて3人の男が十字架に架けられています。この刑場の丘はゴルゴタと呼ばれていました。自由の身になったバラバはその足でゴルゴタでの処刑を見に行きます。

磔刑にされた彼の頭は垂れさがっていて、重苦しく呼吸していた。もうあまり長くなかった。それは決してがんじょうな男ではなかった。体はやせていて弱々しかった。腕はこれまで何の仕事にも使われたことがないように細かった。妙な男だ。ひげは薄くまばらで、胸には少年のようにまったく毛がはえていなかった。バラバはこの男に好感がもてなかった。
 
この時点でバラバには、中央の十字架上の男、自分の代わりに処刑された男がどういう人間であったのか知りません。ただ、汚らしい刑場の丘までその男を見守りに来たひとたちがいるので、彼らの様子を見もします。なかに男の母と思われる女もいます。やがて十字架上の男は死んでしまい、彼らは遺体を下ろし、運んでいきます。

彼らがバラバからすこし離れたところをいっしょになって通りすぎ、男たちが布に包んだ遺骸を運び、女たちが悲愴な行列をつくってそのあとに続いていったとき、女の一人が彼の母にそっとささやいた──バラバの方を指しながら。彼女はふと立ち止まって、よるべないやるせなさと非難とにみちた視線で彼を眺めた。そのため彼は、あの視線は一生忘れられないだろう、と思ったほどであった。

彼はイェルサレムの町に戻り、以前の仲間たちに会います。

彼らは夢中でバラバにテーブルのそばの席を与え、酒をついでやって、口々にしゃべりたてた。バラバが牢獄から出てこられたことや、放免された話、それにもう一人のほうの男が彼の代りに磔刑になったとは、なんとバラバは運がよかったんだろう、などと!

ところが、彼の元気がないので

しまいに彼らは、バラバはどうしたのだろう、なぜあんなふうなんだろう、といぶかりだした。だが、あのでかいふとっちょ女は彼のくびに腕を巻きつけながら、あんなに長いあいだ牢屋の洞穴につながれていたんだし、死んでたも同然だもの。だって死刑を言い渡されたら死んだと同じなんだからね、あとで放免され、許されたといったってやはり一度は死んでしまったのさ……といった。

一同の会話はべつの話題へと移って

その男はだいたい貧乏人にむかっておまえたちは神の国へ行けるんだよって約束をしていたんですって。しかも売女にまで同じように約束したんですって。これを聞くと一同は大笑いだった。もしそれが本当ならすばらしいことだとは思ったが。

こんなふうにキリストのことはただ伝聞の形だけでしか、この小説には書かれません。これは当然そうなのです(このときは、キリストの教えの全体を誰も理解できてなどいませんし、弟子たちによる福音書もまだ書かれてはいないわけです)が、だからこそ、素朴なレヴェルの信仰、誰の頭にも浮かぶ「?」の段階での信仰が描かれます。この本を読むということで考えると、これはキリスト教になじみのない日本人にもとっつきやすいはずなんです。いったい救世主が磔刑にされるとはどういうことなのか?

あの男はもちろん自分が救世主(メシア)だと信じている部類の人だよ、とひとりの女がいったとき、彼はたっぷりした赤いひげをしごきながら、本当に何事かを考えこんでいるかのように、思いに沈んだ。──救世主だって?……違う、あの男は救世主ではないんだ、と彼はひとりでつぶやいた。

翌日バラバが日陰を求めて寺院に入ると、何人かの男たちがいて、

不意に、その死人というのが実は磔刑になったのだ、というのがバラバの耳に聞こえた。そして、それがきのうのことだった、と。きのうだって……?

しばらくしてバラバは男たちのひとりと話すことになります。

しかし、おまえさんの師匠がどうしても磔刑にならなけゃならなかった、というのはどうしてなんだ、またいったいそれがなんの役に立つというのだ? とにかくおかしいじゃないか──うん……わしもそう思うんだ。あのおかたが死ぬ必要のある理由がわからないのだよ。しかもこんなむざんな死にかたで。だがそのおかたの予言どおりにならなけゃならなかったのだ。すべては決められたとおりになる。いく度もおっしゃっていたように、あのおかたはわしらのために苦しみ死なねばならなかったわけさ、と彼はいい加えると大きい頭をかしげた。
バラバは彼のほうに目をやった──わしらのために死ぬって?──そうよ。わしらの身代わりに。わしらに代わって罪もないのに苦しみ、死ぬということ。だってわしらもこれだけは認めなけゃならんのだ、罪深いのはわしらのことなんで、あのおかたじゃないってことだけはな。


バラバはキリストを信じているひとたちの間をかぎまわるようになります。

バラバの身になって考えると、自分の代わりに磔刑になった者があるというだけでなにかとんでもない負担を感じることがあるかもしれません。ただでさえそうかもしれないのに、彼の場合はもっと特殊な条件がありました。代わりに死んだ者がこういうとんでもない男であったために、彼はもっと特別な何かを背負ってあとの一生を送らなくてはならなくなりました。

どうして苦しみを欲することができるのか? 必要もないのに、またそれを強制もされないのに。これは不可解なことで、そのことを考えただけで、むなくそが悪くなりそうだ。彼はそれを考えると、あのやせ衰えた体、ほとんど体を垂れ支えることもできない腕、それにすこしばかりの飲み水がほしいということも口に出せないほどに乾ききった口をしたあの体が目の前に浮かぶのであった。いやだ、彼はこんなふうにして苦悩を求めた者、自ら十字架についた者が好きになれなかった。バラバはどうしても彼が気に入らなかった! しかし、人たちは十字架に架けられた人、彼の苦悩、彼のみじめな死を礼賛した。その死は人たちにとっては決してみじめなものではなかったようだった。

しかし、やがて──

ところがある日のできごとであった。信心家の住んでいる裏町という裏町じゅうに、野火のようにそれが一瞬にひろがってしまったのだ。たちまちにしてそのことを知らない者はひとりもなくなったのだ。あいつだ! あいつだ! 師匠の代わりに放免されたやつだ! 救世主の、神の子の代わりに! あれがバラバなんだ! 放免された男バラバだ!
敵意の視線が彼を追いまくった。怒りに燃えた目から憎悪が光った。それはバラバが彼らの視界から消え去り、再びそこへ姿を見せなくなってからもしずまらないほどの激昂であった。
──放免された男バラバ! 放免された男バラバ!


このへんから彼のその後の人生が語られていくことになります。




この作品、今月の岩波文庫重版再開分として復刊されるわけですが、いま私の手元には以前の版があって、奥付のページには「1978.3.21読了」と書いてあります。さらに「1979.4.11」とも。その後も読み返しているはずだとは思うんですが、いままたおそらくは20年ぶりといえるくらいの通読をしました。やっぱりよい読書となりました。べつのいいかたをすると、こうです──初読が15歳のときのものを、40歳になったいままた読み返し、そしてやはりすばらしいと思った……。15歳で読み、16歳でも読んでいますから、よほど気になっていたんでしょう。もちろん、当時といまとではまたべつの読みかたをしているのではあると思います。それにしても、40歳になって読み返すことのできる作品を15歳で選択していたことになんだか感慨をおぼえます。え〜と、「カラマーゾフの兄弟」を読んだのが20歳になる数日前で、この作品を超えるものをそれ以後読んでいません(それから20年間の読書は、ある意味では「カラマーゾフの兄弟」がどれほどすごいのかを確認するためのものにしかなっていません。←大げさにいってみました)。そういうわけで、15歳から20歳までの読書を私は非常に大事だと思うんです。この年齢のひとたちには常にちょっと背伸びをするくらいの感じでの選書をしたらいいとも思います。自分におもしろいと感じられないようなものを読んだってしかたがないんですけれど、でも、一度きりしか読めないような本にばかり次々に手をつけていくのじゃない方がいいような気がします。もっとも、本なんか読むとろくなことがない、私自身がろくな人間じゃない、本なしで生きてこられたら、もっとのびのびとしていられたとは思うんですけど、ま、ここでは一応読書案内、悪の誘いじみたことをしているわけなので、ティーンエイジャーの読書のことを書いてみました。














「僕たちは手持ちの技術を使って、世界をよき方向に導こうとしている。つまり、世界をハックしているのさ」
THE S.O.U.P.

川端裕人

角川書店 1800円+税
先月おすすめした川端裕人のコンピュータ(あるいはインターネット)を題材とした小説です。

はじめに、私はほとんどパソコンをいじりません。なんてったって持ってませんからパソコン。仕事でオフィスにあるパソコンを使うくらいですので、専門用語がさっぱりわかりません。だからちょっと読むのに苦労しました。

主人公 周防巧はその筋では伝説のハッカー。ハッカーと聴くと少し前まで「クラッカー」と混同されていた為、悪いイメージがありますが、この本の中の説明では、ハッカーとは(主にコンピュータ、及びそのプログラムに対して)改良を加えていく人たちを指すようです。巧は以前FBIに協力して犯罪の摘発に関わったことがあり、現在は日本でのサイバーセキュリティの専門家のような存在。

政府のあるサイトに対するアタックに困り果てた依頼人が巧のもとに仕事を頼みにくるところからストーリーは始まります。その仕事は簡単に片付くと思われたのですが、途中で行き詰まってしまう。相手のスキルは大したことは無かったのですが、追い詰めていくその途中、かつての仕事仲間の「SOS」のメッセージを受け取ることになり、これらの事件の背後に「egg」というクラッカー(集団?)の影を巧は知ることになったのです。

巧のかつての仕事というのは、インターネットを介したゲームソフト「SOUP」の開発でした。たった3人から始まったそのビジネスはまたたく間に急成長し、世界中のネットワーカーを寝不足にさせてしまうくらい熱中させるほどでしたが、巧は途中でその仕事から降りてしまいます。「SOS」をおくってきたのはその3人のうちの1人でしたが、まったく居場所もつかめず、巧はネットワークと現実社会との二つの世界で調査をする羽目になるのです。

先程書いたとおり、私はコンピュータの専門用語なんて全然理解していないので「ぷろとこるって何ね?」「え−じぇんとって何ね?」「あばたーって何ね?」と言う具合でいまだに理解していません。正直その辺をわかる人が読んでこその小説かもしれません。そんなわけで、コンピュータに詳しく、かつ本をたくさん読んでいる上司によんでもらったところ「著者がそうとう(コンピュータについて)勉強したのか、もしくはもともと知識があるのか判らないけど、おもわずニヤっとするところがある」とのこと。

「おもわずニヤっとするところ」が何処なのか私にはわかりませんが、びっくりしたことがあります。それは先日起きた韓国を中心におきたサイバーテロです。普通のクラッキングのように特定のサイトなどを攻撃するのではなく、サーバーというネットワークの要所を狙ったそれは、この小説の中でも使われていたんです。うーむおそろしい…。

また、この作品を前回の「夏のロケット」と同じ感覚で読むと、ちょっとがっかりするかもしれません。なぜなら、川端裕人さんってあまり人物の「書き込み」といえば良いんでしょうか、それがあまり強くないんですよね。『夏のロケット』の時はそれがちょうど良かったんです。あまり登場人物を強く書きすぎないことで(登場する人たちはみんなヒトクセありましたが)逆に自分自身がその中に入り込むような感覚で読めたのですが、この『S.O.U.P.』の場合、主人公を含めてほとんどの重要人物が全員「引きこもり系」か「ひきこもり経験者」なものですから、感情移入して読むことがあまり出来ないんです。その辺は正直ちょっとがっかりしたのですが、ラストシーンのハッカーが(あるいは著者が)やりたかったことが具体的な形となって描かれているのですが、そこはコンピュータにうとい私でも頭にヴィジョンが浮かんで結構面白かったです。それは小説の途中にも書かれてはいますが、今までいくつものSF小説に登場するAIシステムとは異なる考え方で結構ユニークなものです。

早川文庫の『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン)という本があります。かつて、サイバーパンクの金字塔と呼ばれた本ですが、この本のタイトルが『S.O.U.P.』のなかにも登場します。コンピュータが高度に発達した社会の暗部を描いたものをサイバーパンクと呼ぶそうですが、この『S.O.U.P.』もそれに入るものなんでしょうか?ハッカーの皆さんの意見はどうなんでしょうか?聞いてみたい気もしますが……。














オールド・ルーキー
先生は大リーガーになった

J.モリス J.エンゲル  松本剛史 訳

文春文庫 590円+税
これは実話です。本当に出来すぎたぐらいのお話ですが、本人の自伝です。まさにアメリカン・ドリーム≠ニいったストーリーです。
3度の手術を繰り返し、一度はあきらめたメジャーリーガーへの夢を実現するまでの話です。
まず、日本では考えられない話です。35歳のオッサンが158キロのストレートを投げるなんて!! たしか日本最速は158か159キロではなかったでしょうか?
そんな化けもんみたいなオヤジの生い立ちから、メジャーリーガーへの夢だけでなく、その間のローリとの夫婦の心の葛藤も書かれており、最後には涙なしには読めないお話です。
ただし、単純で野球バカがオススメしている本なので、読んでもらいたいひとも、もちろん野球バカです。
それ以外のひとにはべつにオススメしません。
読み終えた後に何かヤル気がわいてきますよ!!
さあ、キャンプインだ!!










運命の一球

近藤唯之

新潮文庫 476円+税
昭和52年10月26日
日本シリーズ 巨人対阪急 第4戦
9回表2−1で巨人リードで2死2塁から高井のレフト前ヒットでホームに戻った蓑田選手の走塁を覚えていますか? あの日本シリーズ史上に残る走塁を知っていますか?
阪急ファンだった当時、小学生の私には最高にスゴイプレーだった記憶があります。
ところが、そんなプレーに対して上田監督からきょうのプレーは結果オーライで、せいぜい60点か70点だな≠ニ言われていたとは。
その理由はここでは書きませんが、なるほどやっぱりプロはスゴイと思わせられる理由です。ところで、蓑田選手って知っていますか?
3拍子揃った外野手で、福本との1・2番コンビはプロ野球史上最高の1・2番コンビでしょう。
他にも江夏、山田、星野、長嶋の話から、古田、中村(紀)の話まで載っていて、野球ファンには必読の本です。














るるぶ情報版 首都圏
ペットとおでかけ日帰り編


JTB 952円+税
厳しい寒さがつづいていますが、休日にはなるべくこども達(チワワ)とでかけるようにしています。比較的暖かい日には遠出もします。普段家の中にいる時間が多いので外出すると大喜びします。家では見せない表情・しぐさ・行動・新しい発見がたくさんあります。外出する度に絆が深まるといううか、とにかく可愛くて可愛くて親ばか状態です。たぶんワンちゃんと生活している方は同じ思いではないかと思います。そこで今月のおすすめはワンちゃんと楽しい思い出がつくれる情報誌を選びました。首都圏を中心に日帰りで行けるリゾート、おしゃれな街、ワンちゃん同伴OKの公園、お店がたくさん紹介されています。犬種によっては季節的にむずかしい場所もありますが、春・夏・秋・冬と時期に応じて行き先を決めれば問題は無いでしょう。とにかくワンちゃんとおでかけして下さい。そして楽しい思い出をたくさんつくってください。

・街へ、海へ、公園へ!
    お台場でアーバンリゾートライフ
    車でひっとびの湘南で波と戯れよう
    ハイソな気分で軽井沢の高原散策

・わんことタウンデートしよう
    代官山・恵比寿  原宿・青山  自由が丘  駒沢公園
    横浜・本町・山手  二子多摩川周辺  港北ニュータウン
    わんこといっしょにくつろげるカフェレストラン
    わんこ大喜びののびのびできる公園
    可愛くて便利なPetGoods

・ わんことショッピングモールでお買い物
    横浜ベイサイドマリーナ  グランベリーモール
・ わんちゃんと行けるキャンプ場ガイド
・ わんこと一緒に日帰りドライブ
    伊豆マウンテンドッグラン  清里ブルーグラスフレンドパーク
    清里WANWANパーク  八ヶ岳ワンワンパラダイス
    日光わんわんの森  那須わんわんワールド
    DogVillage  FieldDogsGarden 
    富士スバルランドドギーパーク  つくばわんわんワールド

・日帰りドライブ番外編   
    ここもはずせない!わんことアウトドアする スポット8
    わんちゃんのことを一番に考えた快適ドライブマニュアル
    ペットが喜ぶ高速道路のサービスエリア・パーキングエリア

Column
知っておきたい情報BOOK
まだまだある情報リスト
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犬 猫 猿 九官鳥 家鴨 鹿 狸
わが最良の友 動物たち

遠藤周作

グラフ社 1600円+税
 遠藤先生、ゴメンなさいm(_ _)m

本文は購入Or立ち読みして頂くとして(おい!)…ここはひとつ、ワタクシめと遠藤先生の因縁話を。

あれは今から21年も前の話、当時小学生だったワタクシめは、ハトコの結婚式に呼ばれ、その帰りに親父&親戚と京都見物を致し、嵐山の宿に宿泊した事がありましたが、その宿の道路を挟んだ向かいには、やたらと長く高い塀が何処までも続く、如何にも【おっ金持ちぃ!】的なお屋敷がありまして、その…ナンと言いましょうか、貧乏人の僻みでは無く、純真な悪戯心だったと思います…多分。

事もあろうに道端に転がっていた石を

   ぽいぽいぽいっ!

と無差別爆撃宜しく、塀の中目掛けて投げ込んでしまったのであります!!

おりしも季節は冬、降り積もった雪のせいで何の音も致しませんでしたので、被害も無かろうと別段気にせずに引き上げたのですが、そのお屋敷こそが遠藤周作先生の御別荘であると知ったのは、先生が他界されて後の事でありました…(‐‐;)

本書後書きにて

皆さん、奈良の公園で一匹の鹿にあい、その鹿がうるむような眼であなたをじっと見たら

それは私の生れ変りだとおもって鹿センベイを余計にください


と、先生は申しておられました…ゴメンナサイ、先生。
今度奈良公園に行く機会があって、先生の生まれ変わりの鹿に出会えたなら、お詫びの印に鹿センベイ、沢山ご馳走しますから、私の旧悪は忘れて下さい(苦笑)

  今回のオススメ度 ★★★★☆(遠藤周作先生の遺された、数々の作品に登場する動物達に触れた部分だけ抽出した、ちょっと変わった本。芥川賞作家にしてクリスチャン、ユーモア作家としても一世を風靡した、彼の意外な一面が、垣間見れるかもしれません。)














おいしいコーヒーをいれるために

中川ちえ

メディアファクトリー 1100円+税
 少し話そうよ、コーヒーをいれたから

…なぁ〜んてキャッチフレーズのCMが、ちょっと前に流れていましたが、本書はそのものズバリ、【美味いコーヒーを飲む為の指南書】なのであります!

ひなびた喫茶店なんかで良く見掛ける、サイフォンサーバーで入れたコーヒーは、最高に美味ですが、家庭でそこまでする方はいないでしょう…って言うか、そんな物ある訳無いか(^^ゞ

せいぜいドリップ・マシンにフィルターを敷いて、あらかじめ挽いて貰ってある粉をドリップする位でしょうが…

     甘い!!

そいつはガムシロップをコテコテにいれた、アイスコーヒーより甘いっす!!

真の珈琲愛好家なら、豆選びから始め、ミルで挽き、ドリッパーにて必要な分だけ入れる!

それが真の珈琲道、真の珈琲愛好家の正しい姿なのであります!!

…いや、ロースト迄は流石に無理っすけど(‐‐;)

  今回のオススメ度 ★★★★☆(今までに有りそうで無かった、正しい珈琲の入れ方読本。コーヒーに欠かせない必需品のウンチクから、ホット・アイス・カフェオレの正式な入れ方までを丁寧に教えてくれます。)





機動戦士ガンダム
兵器 モビルスーツ

円道祥之

宝島社文庫 600円+税
 至って真面目なガンダム兵器論

1978年の初放映から、既に25年。【ガンダム】の名を冠した諸作品は現在、TV最新作「SEED」を筆頭にビデオ、映画、小説、漫画、ゲームといった、ありとあらゆるジャンルに進出して絶大な人気を誇っています。

かく言う私もファンの一人で、良くガンダム関連のゲームでは遊んでおりましたが、そのうちにふと、ある疑問が浮かんで参りました。

モビルスーツ(MS)って、結構ボンボン爆発したり撃破されてるけど…コレって確か、エンジンに核融合炉使ってなかったっけ?

現代の兵器だったら、絶対に有り得ない話ですし、漫画だから何でも許されるのでしょうが、実際にMSが存在して、それが破壊されようものなら、放射能汚染は間違い無し!

1機破壊されただけで、どれくらいの範囲が【死の大地】になるのでしょう…恐ろしい。

まぁ、現実には戦闘用のロボットなど存在しませんから、核搭載兵器といったら、ミサイルとか、潜水艦とか、飛行機辺りがその対象になる訳ですけど、そう言った現行兵器と照らし合せつつ、MSの開発・運用から、製造コスト、発達史などを本書は真面目に語っております。

  今回のオススメ度 ★★☆☆☆(全てのガンダム作品ファンに捧げる、至って真面目なMS論。設定のアナをも突いていて、耐用年数はどれくらいだとか、廃棄されたらどうなるのかなどが書かれており、現用兵器の雑学本としてもお楽しみ戴けます。)




≪一冊入魂≫

第14回 『机上の九龍』

『ブレードランナー』って知ってますか?

 ハリソン・フォード主演でルトガー・ハウワーが悪役のアンドロイドを演じて話題となった映画ですね。映画バカな私個人的にも大好きな映画で、中学校の頃にSFX展とかに行って本物のタイレル社のピラミッドのミニチュアとかハリソン・フォードが乗っていた車とか見て『スゲ―っ!』とか言っていたのを思い出します。

 何故『ブレードランナー』の話から入ったのかといいますと、今回紹介する『机上の九龍』という作品はどこかしら『ブレードランナー』の匂いがしているんですね。設定も近未来ですし、主人公も似たような職業だったりするのですが、それ以外にも言葉ではうまくいえない、雰囲気みたいなものが似ています。『ブレードランナー』ファンはきっとハマると思います。是非読んでみてくださいませ!


机上の九龍

青木 朋

小学館 全1巻 1143円+税
 まずは簡単な作品紹介から。

 2000年代中期、正月戦争と呼ばれた最悪の戦争によって壊滅的なダメージを受けた世界は、ひとりの冗談好きの博士、Dr.モロによって作りなおされた。

 東京ネオ九龍。そこにひとりの男がいた。彼の名前は机田九。あらゆる物を捜し出す『捜し屋』をしている。彼の父親はラビというウサギ。彼はDr.モロによって造られた人の言葉を操る『特別保護クローン』と呼ばれるクローン生物。今日も九のもとにさまざまな依頼者たちがやってくる。或る者は人を、また或る者は己の未来を捜してほしいと・・・


 本作の主人公机田九は幼い頃に両親と別れたスラム街の住人でした。だが育ての父親となるクローン生物ラビと出会うことによって人間らしさをとりもどし、『捜し屋』に従事するようになります。

 彼はその卓越した推理能力を使い、依頼されたもののみでなくその真実をも探し出していきます。その真実は依頼者個人に関わるものから国家レベルのものまで本当にさまざま。ただ、彼と関わるものは最後には必ず優しい顔になっていることからもわかるように、本当に捜し出してほしかった真実なんでしょう。
超私的お気に入りエピソード

絶望のクローン

P.267〜320
 本作にはいくつかの依頼がありますが、個人的にお気に入りなのは最後のエピソード。

 この世には8匹の特別保護クローンがいる。九の父親であるラビもそのうちの1匹。それらの持つ能力は元の動物とはかなり異なる。

 ある日、ひとりの依頼人が多くの犬を連れて九のもとを訪れる。彼の依頼とは自分の飼い犬のトントの尾行だった。トントはおてんと幼稚園というところからレンタル依頼を受けて毎週貸し出している犬。目を患っている飼い主ハリーはトントが帰ってくるたびに血の臭いがすることに気付き、九に依頼しに来たのである。

 早速尾行をはじめる九。その時おてんと幼稚園のバスから降りてきた男はとても幼稚園関係者とは思えない人間だった・・・

 この後更に九は尾行を続けていきます。その場で衝撃の場面に出くわすことになります。更にトントの本当の正体が判明していきます。

 また、飼い主ハリーの口からトントとの出会いが語られていきます。トントはDr.モロの研究所の飼育係だったハリーの父親が貰い受けた犬で、ハリーは幼い頃からミルクや食事を与えていた。だが目が悪くなったハリーがお金に困り真実を知りながら『幼稚園』にレンタルしていたのです・・・

 いつもどおり『仕事』を終えたトント。だが様子がおかしい。突然人間たちに襲いかかる。逃げ出す九とラビ、そしてハリー。走りまわり息を切らすハリーに九はミルクを差し出し、ようやく一息ついたそのとき暗がりからトントが姿を現す。

 臨戦態勢を整える九とトント。一瞬トントに躊躇いの表情が浮かぶ。刹那、意を決したようにトントが九めがけて飛びかかる!再び躊躇いの表情を見せるトント。その瞬間1発の銃声が響き渡る・・・

 この後の展開は皆さんで確認してくださいませ。トントとはいったい何物だったのか?何故躊躇してしまったのか?この後に多くの謎が九によって解明されます。

 そしてトントがハリーに問いかけた言葉が九の口から語られます。その言葉はあまりにもせつなく、そして哀しいものでした・・・

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